誕生日の朝、仕事場の机に万葉集が届く。
ゆったりとした心持ちで、古代の時間へ体を慣らすように、ほんとうにゆっくりゆっくりと、
ページをめくっていく。
そこにある、数々の歌の心が、なんの抵抗もなくすっと、ストレートに、じんわりと伝わってくる。なんで、7世紀から8世紀の人が書いたものを読んで、私は泣かされてしまうの?と自分を笑いながらも、なんだかちょっぴり嬉しい。
「寂しい」とか「恋しい」とか「切ない」とか、景色をみて「きれい」だと思うとか、そういう人の心の営みがずっと、脈々とつながってきて、その延長線上に1000年以上の時を経て私がいる。
8世紀ごろの人々の思いを読んで、ほろり、とする私がいる。
いつかはわからいないけど、みんな死んでしまう。
いつか体が動かなくなって、冷たくなって、口もきけなくなって、姿形もなくなってしまう。
万葉集で、愛しい人の死を嘆いた人たちも、もうとっくにいない。
一日があっという間なら、あっという間の一日が365集まった一年もあっという間。
1000年だって、きっとあっという間。
だからこそ。
まだ、肌が暖かいうちに。
まだ、目が見えるうちに。
まだ、言葉を持っているうちに。
まだ、伝えられるうちに。
まだ、私もあなたもいるうちに。
これからもよろしく、です。(ペコリ)