東北の手仕事をずっと紹介している方が、
東京でいま「みちのく着物紀行」展をやっている。
数ヶ月前、取材でお世話になった方。
地震以来とても心配だったのでご挨拶に伺った。
開催するかどうかずいぶん迷ったようだけど、
今だからこそやらなきゃと思い、なんとか開催にこぎつけたとか。
彼女が抱えている東北の職人さんたちは、みんな無事だったようだけど、
彼らの不安は大きい。
「わしらは無事だったけど、こんなことになってしまったら……。
この商売は、”ふつうの生活”があって初めて成り立つものだから、
これから先、どう暮らしていけばいいか……」
そんな彼らの言葉を聞いて、はっとしたという。
また、東北屈指の観光地、青森の十和田湖や奥入瀬渓流などは
地震の被害はほぼなかったが、客足がぱったり途絶えた。
他の東北の観光地も同じ。
これが半年、一年と続いたらどうやって生きていけば・・・と
彼女も大きなため息をついた。
地震や津波の被害を直接受けていない場所も、
広範囲にわたって二次的被害を受けている。
彼女とひとしきりおしゃべりをすると、最後に、
「これ、もらってくださる?」と赤べこをそっと手渡してくれた。
「これ、福島のものなんです。1200年前、会津地方では木材運搬に
牛を使っていたのですが、重労働にほとんどの牛が倒れました。
でも、その中でも最後まで働き通したのが赤い色の牛、赤べこだったんです。
鼻をちょん、とつっついても、何度も上を向くんです。
つらいことがあったら、ちょん、ってやってみてね」
心がぎゅっとした。