編集長のところに北陸の蟹が大量に届いた。
さっそく山分け。
蟹は、食べだすと止まらない。
ぐあしっ!
と一思いに蟹の足を折り、ちゅちゅちゅーと吸い上げる。
「うわ、私ってけっこう残酷!」
と思う反面、原始人になったような、とても愉快な気分。
小道具の一切ない編集部だったため、使えるのは自分の歯と手と割り箸のみ。
バリバリ歯で割って、ちゅうちゅう吸う。
足を全部食べてしまうと、残りは胴体・・・。
「えい!!」
と気合いを入れて甲羅をぱっかりと手でこじ開ける。
「うわあ・・・ちょっとグロイ・・・なんだこれー、ぎゃあ・・・」
と内心怖じ気づきながらも、そんなことを言ったらブリッコみたいなので、ぐっと我慢する。
こうなったら、原始人になりきって、躊躇せずにガンガンいくのだ。
それにしても・・・やっぱりおいしい。濃厚なミソや卵がとろける。
足を一本一本折っては歯で割り、やっと胴体までたどりついて食べるそれらは、
ゴールの贅沢なご褒美のような、濃厚な味。
蟹は、この「ひと手間」かける感じが楽しい気がする。
「食べる」という行為に積極的に関わる「行動」が含まれているのが無性にワクワクさせる。
蟹を食べるのが目的なのか、あの「食べる」という行為が楽しくて蟹を食べているのか、一瞬わからなくなるが、たぶん両方。
そういえば、L社のH社長は、その昔、結婚相手のご両親との初めての夕食は、蟹料理にしたとか。
なるほど、あまりしゃべらずに、食べることだけに夢中になって食事の時間を終えられる。
蟹を食べるたびに、その話を思い出し、「うむ・・・確かに!」と一人で納得する。
などと思いながらひたすら「バリッ!ちゅうちゅう、バキッ!」とおしゃべりもろくにせずに食べていたら、あっという間に3体もぺろりと平らげていた。
「蟹ってカロリー高くないよね? そんなに太らないよね?」
「きっと大丈夫よ!蟹で太ったなんて話は聞いたことないもの!」
悲しいかな、つい確認し合ってしまう、慢性的運動不足の妙齢女子編集部員。