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「機体はあと15分で成田へ着陸します」
そんなアナウンスを聞きながら外を見ていると・・・。
そこに広がる光景に、思わずはっと息を呑んだ。
立ちこめる雲と暗い海の中を、ゆっくり二艘の船が視界の上へ向かっていく。
まるで、世界の始まりの、神話のような光景。
そして日本の大陸が見えてくると、降り注ぐ光！
飛行機に何度も乗っていても、初めてみる光景。
なんだかゾクゾクした。
太古の時代にタイムスリップしたような、
空の上から、日本の始まり覗き込んでいるような気分。
あ、そうか。
この太陽が今年最後の太陽。
夕日が沈めば、そこから新しい年が始まる。
雨がふったり止んだり。
春のような温かさで、思わずコートを脱いで歩いたり。
ちょっと変な天気の師走のマドリッド。
最後の「タパス」を食べて、ルフトハンザへ乗り込む。
またすぐ来るからね。
朝一番で、プラド美術館へ。
Goyaの黒い絵の迫力、Juan de Riberaの人たちの皺、Van Eyckの肖像画・・・。
絵って、やっぱりなんだかすごいかも！
一枚の絵をまるで鏡のように介し、
時空を超えて画家や、それを取り巻く世界と向かい合っているようで、ドキドキする。
でも、コテコテの中世の宗教画が続いた後に、
古代の壁画のようなものを見ると、
なんて自由でのびのびしていて、きれいなのかしら、
という気持ちにもなる。
スペインにいると、なぜかいつもの倍以上笑っている。
ような気がする。
住むようになると、きっとそれ以上に、
ムッとしたり、イライラしたりもするのだろうけど、
それでも、確かによく笑う。
（単に私が休暇中だから、というのも大いにある！）
どんな仕事についていようと、
仕事中であろうと、なかろうと、
そこにいるのは常に「自分」。
この国では、言い意味でも、悪い意味でも、
まず「自分ありき」なのかもしれません。
それにしても、スペイン人の、あの「遊ぶ」パワーって一体どこから？
あ、そうだ、チェマだ！
と思い出して、連絡をしたら、すぐに会えることに。
今年、東京で展覧会をした写真家のチェマと、半年ぶりの再会！
パエリアを食べた後に、同じく今年、東京で展覧会をした、
画家のフェルナンドの家へ行こう！とさっそく押しかける。
テキーラを飲みながら、盛り上がった。
お昼ご飯のつもりが、結局気がつけば８時間・・・。
スペインの”ランチ”って、やっぱり長い？！
Mil gracias, Chema!
今日は、プラド美術館は定休日。
それじゃあ、とホテル近くのソフィア王妃美術館へ。
夜21時まで空いているので、夕方駆け込んでも落ち着いて見られる。
（でも、夕方なのに入り口は長蛇の列・・・）
ここには、ピカソのゲルニカがある。
あの大きな絵の前に立つと、
叫び声や、爆音や、いろいろな音が聞こえてくるようで、
身動きができなくなって、
だんだん心が痛くなって、どうにも涙がでてきてしまう。
なんで絵を見て泣いてんだろ、と自分がおかしくなっちゃうのだけど、
どうにもならない。おかしい。
ただの絵なのに。
私とは関係のない、昔の戦争の話なのに。
なのに、なんで”痛い”？
ゲルニカを見ると、ここの美術館にある他の絵は吹っ飛んでしまう。
ミロもダリも、すっかり吹っ飛んでしまう。
トゥデラからマドリッドへ。
街と街の間には、なだらかな丘。
どこまでも続く乾いた大地。オリーブ畑。赤い岩。木々。
こういう風景を見ていると、
ああスペインにいるんだな、という気持ちになる。
マドリッドに近づくにつれ、空模様も、
晴天から、曇り、虹、曇り、雨、著しく変わる。
空間的にも、時間的にもどこにも属してない状態。
”移動”をしているときは、なぜだかとても心が落ち着く。
圏外にいる開放感。
ああ、目的地にまだ着かないで。
お願いあと少し。
移動中は、いつもそんな気分。
最後の夜は、あやちゃんがおいしい天麩羅うどんを作ってくれた。
それなのに、未だにお腹がいっぱいで、
少ししか食べられないのが、くやしい。
Mil gracias, Aya y Dani.
Nos veremos pronto!
ナバラの富士山、モンカヨへ。
運転をしてくれたのは、ダニちゃんのおじさんのヘススさん。
キマってます。guapo!
モンカヨへ行く途中に不思議な場所があります。
明らかに下っている坂道なのに、
車のブレーキをゆるめると、バックしてしまうのです。
つまり、車がバックして上へのぼっていくのです。
？？？
ボールを転がしても、同じ。
昔からマスコミが取り上げ、
研究者が調べてきたのに、未だに原因は不明だとか。
不思議！
そして、もうひとつ。
モンカヨ山の途中に廃墟となった病院があります。
精神病を煩った人のための保養施設？のようなものだったとか。
立ち入り禁止となっていますけど、
もちろん入り口に鍵がかかっているはずもなく、余裕で入れます。
ええ、入りました。
しかし、こういう場所へ入ったとたん、
想像力がぐんとたくましくなり、
いろいろなものが、あらゆるものに見えてきてしまうので、
恐ろしくてすぐに逃げ出しました。
ふう、怖かった。
最後は、モンカヨ山麓の修道院。
ひそひそささやく修道女の声や、足音や、
衣擦れの音・・・。
そんな小さな音が、石に染みこんでいそうです。
オチャガビーア。
お茶がびあ？
なんだかかわいい名前の村が、トゥデラの北にある。
「ナバラの京都（江戸）！」というだけあって、
中世の雰囲気がそのまま残っている。
おとぎの国の世界みたいな、
こんな村に住むって、どういう感覚なのかな、とふと思う。